行雲流水 花に嵐
「野郎ども! この牢人を斬ったら、五両払うぜ!」

 勝次の声に、奥から出て来た無頼牢人どもが、おお! と声を上げて宗十郎に向かってくる。
 が、そんな者たちは、手前にいた片桐に、ことごとく足払いで倒された。

「気に入らないわね。宗ちゃんには賞金がかかって、あたしにはなしなの?」

「うるせぇ! 二人とも叩っ斬れ!!」

 宗十郎と片桐の二人と、勝次らの温度が違い過ぎる。
 羽虫のようにたかってくる男どもを何人か蹴散らし、宗十郎は中に走り込んだ。

 勝次が奥に消えたのだ。
 仙太郎のところに行くに違いない。

「ちょっと宗ちゃん。雑魚をあたしに任す気?」

 相変わらず甕の蓋で敵を倒していた片桐が、宗十郎の背に叫ぶ。

「お前には賞金かかってねぇんだから構わんだろう」

 言い捨て、宗十郎は勝次を追って廊下を走る。
 だが如何せん狭いので、一人立ち塞がれば横をすり抜けるわけにもいかない。
 金に目の眩んだ男を倒しつつ進むしかないので、たちまち勝次を見失ってしまう。

「うーもー! 生意気なんだからーっ!」

 きーっと嫉妬を爆発させ、片桐はその怒りを前に迫った男にぶつけた。

---まぁいいわ。そろそろ亀松も出張ってくるんじゃないかしら。一人ってことはないだろうし、そっちの相手をさせて貰うわ---

 勝次の怒りは宗十郎に向いているが、亀松のほうは片桐に向いているはずだ。
 相手をするのにお互い不足はない。

---腕のほどは、勝次のほうが立ちそうだけどね……---

 親玉の右腕だ。
 竹次に対する勝次の態度も見ている。
 亀松の護衛などもしていただろうし、腕は相当立つと見ていい。

 ちょっと、片桐は悔しそうに舌打ちした。
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