行雲流水 花に嵐
「用心棒か……。二人組の片割れがそうってことぁ、もう一人もそうなんだろう。頭の片腕に重宝されてるってなら、腕前もそれなり、と見たほうがいいだろうな」

「そうだな……。確かに、纏う気もちょっとただ者じゃなかったし」

 宗十郎も今日会ったのだ。
 が、あのとき向こうは油断の塊だった。

 少しでも相手を意識しないと、正確な腕のほどはわからないのだ。
 ただ、荒んだ雰囲気を全体にまとっていた。

「そうそう。片桐の旦那が、亀松の下っ端に接触したようだぜ」

 そう言って、要蔵は少し前に立ち寄ったという片桐の話をした。
 たまたまやり合った亀松の下っ端に惚れられ、一味に加わるよう誘われているらしい。

「三日後に、また会うらしい。そのときに、直で亀松の野郎と会うことになるかもな」

「用心深い奴が、そうそう簡単に姿を現すかな」

「つか、そんな下っ端の言うことに耳を貸すかが怪しいぜ」

 要蔵が煙管をかつん、と煙草盆に打ち付けた。

「それで、片桐は何と?」

「上手くいけば一気に頭の面を拝める。いくら何でも、そこで討ち取るわけにゃいかねぇが、相手の懐に入るのも面白い、と言ってたな」

「……全く、蛇のような奴だ」

 宗十郎がため息をつく。
 だが仲間に入ってしまえば、内側からの攻撃も可能になる。

「亀松に、あっちの気があったりしてな」

「そうだとしても、片桐の旦那なら返り討ちだぜ」

 ははは、と笑う要蔵と別れ、宗十郎は離れを後にした。
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