行雲流水 花に嵐
---おすずちゃんも、遊女になってたらこんな目に遭わなかったかもねぇ---
と言ってもちゃんとした廓の遊女になれば、客の選り好みなどよほどの地位まで上り詰めないと出来ないし、登楼するにも金がいる。
宗十郎など通えないだろうが。
---おすずちゃんは、根っから宗ちゃんのために危機に陥ってるってわけねぇ---
可哀想に、と上辺だけで憐れみ、片桐は杯を干した。
「ところでその子は何も知らないから、竹ちゃんに下げ渡すの? 見世では使わない?」
「んにゃ、どっちにしろ俺らのことを知っちまった。取り込んだほうがいいだろう。器量もまぁ悪くねぇ。殺っちまってもいいんだが、金になるならここで使うぜ」
「裏のほうだね」
この見世では元の弥勒屋も近いので、いろいろ都合も悪かろう。
攫って来た娘は、端から隔離された別邸で客の相手をさせられるようだ。
おすずもそこに放り込まれるに違いない。
「竹ちゃんのご執心な女子、見てみたいわぁ」
「田舎くせぇ女子だぜ。働かす前に、ちっと磨く必要があるなぁ」
「素人さんなら仕方ないわよ。でも磨くことに関しては賛成ね。遊女は美しくないと。何ならあたしが磨いてやろうか?」
上手く行けば、さっさとおすずを見つけられるかもしれない。
片桐が言うと、勝次は、そうだなぁ、と呟いた。
「旦那に頼んだほうが、確かにいいかもな。けど、それもしばらくしてからよ。何せ今は、竹の野郎に痛めつけられて酷い有り様だ」
ぷか、と煙管を燻らせる勝次に、片桐は目を細めた。
勝次は別に、おすずが死んだっていいのだ。
手当てもしているか怪しいものである。
「壊しちゃったら商品にならないじゃない。女子は大事に扱いなって」
「端から商品なら、わしだってそう命じるがなぁ。竹の野郎が、女殴りながらやるのがいいとか言うのさ」
片桐の顔が、あからさまにしかめられた。
「そーお。じゃあ今度、あたしが竹ちゃんを殴りながらやってやるわ」
「おいおい旦那。気を悪くしたかい?」
「当たり前よ。あたし、自分本位な行為は嫌いなの。相手があってこそのことならなおさらよ。女子のほうも、殴られるのが気持ちいいってんならいいけどね」
と言ってもちゃんとした廓の遊女になれば、客の選り好みなどよほどの地位まで上り詰めないと出来ないし、登楼するにも金がいる。
宗十郎など通えないだろうが。
---おすずちゃんは、根っから宗ちゃんのために危機に陥ってるってわけねぇ---
可哀想に、と上辺だけで憐れみ、片桐は杯を干した。
「ところでその子は何も知らないから、竹ちゃんに下げ渡すの? 見世では使わない?」
「んにゃ、どっちにしろ俺らのことを知っちまった。取り込んだほうがいいだろう。器量もまぁ悪くねぇ。殺っちまってもいいんだが、金になるならここで使うぜ」
「裏のほうだね」
この見世では元の弥勒屋も近いので、いろいろ都合も悪かろう。
攫って来た娘は、端から隔離された別邸で客の相手をさせられるようだ。
おすずもそこに放り込まれるに違いない。
「竹ちゃんのご執心な女子、見てみたいわぁ」
「田舎くせぇ女子だぜ。働かす前に、ちっと磨く必要があるなぁ」
「素人さんなら仕方ないわよ。でも磨くことに関しては賛成ね。遊女は美しくないと。何ならあたしが磨いてやろうか?」
上手く行けば、さっさとおすずを見つけられるかもしれない。
片桐が言うと、勝次は、そうだなぁ、と呟いた。
「旦那に頼んだほうが、確かにいいかもな。けど、それもしばらくしてからよ。何せ今は、竹の野郎に痛めつけられて酷い有り様だ」
ぷか、と煙管を燻らせる勝次に、片桐は目を細めた。
勝次は別に、おすずが死んだっていいのだ。
手当てもしているか怪しいものである。
「壊しちゃったら商品にならないじゃない。女子は大事に扱いなって」
「端から商品なら、わしだってそう命じるがなぁ。竹の野郎が、女殴りながらやるのがいいとか言うのさ」
片桐の顔が、あからさまにしかめられた。
「そーお。じゃあ今度、あたしが竹ちゃんを殴りながらやってやるわ」
「おいおい旦那。気を悪くしたかい?」
「当たり前よ。あたし、自分本位な行為は嫌いなの。相手があってこそのことならなおさらよ。女子のほうも、殴られるのが気持ちいいってんならいいけどね」