行雲流水 花に嵐
そんなある日、道場で見かけることのなくなった宗十郎を、しきりに気にする師に不安を募らせた仙太郎は、宗十郎に父親の前での勝負を申し込んだ。
宗十郎のことを知る周りの者の気が皆宗十郎へ向かえば、父親とてそちらに流れるのではないか。
一旦は跡継ぎに、と引き取った弟である。
いつまた何時、そう考えるかわからない。
そんな不安があったのだろう。
また、宗十郎はいくら師の目に留まったとはいえ、基本からきちんと習ったことなどない。
見様見真似の、我流なのだ。
しかも、ちゃんとした木刀や竹刀を使ったわけでもない、単なる棒切れや箒を振っていただけのこと。
幼い頃よりしっかりと基礎から習った己より、根本的に勝てるわけはないのだ。
父親の前で徹底的に打ちのめして見せれば、今後周りに何を言われようと、己のほうが実力があるとわかっているため、揺らぐことはないだろう。
何せ自分は目録の腕だ。
腕の一本も折ってやるのも、面白いかもしれない。
「さぁ宗十郎。お主も剣を齧ったのであれば、一度くらい正式に立ち合いをしてみたいだろう。ちゃんと父上に検分役もお願いしているし、母上もご覧だ。遠慮はいらんぞ、思う存分打ち込んで来るがいい」
馬鹿にしたように、仙太郎が宗十郎に木刀を投げ、構えた。
庭に面した縁側には、父と正妻の姿もある。
父はともかく、正妻は、ことのほか嬉しそうだ。
仙太郎と思考が全く同じなのだから、正妻も息子の地位を盤石にできるのであれば、妾の子など試合にかこつけて始末したいところなのだろう。
己の息子の腕を露程も疑っていないので、今日こそ憎っくき存在を蹴落とせると、目を輝かせている。
宗十郎のことを知る周りの者の気が皆宗十郎へ向かえば、父親とてそちらに流れるのではないか。
一旦は跡継ぎに、と引き取った弟である。
いつまた何時、そう考えるかわからない。
そんな不安があったのだろう。
また、宗十郎はいくら師の目に留まったとはいえ、基本からきちんと習ったことなどない。
見様見真似の、我流なのだ。
しかも、ちゃんとした木刀や竹刀を使ったわけでもない、単なる棒切れや箒を振っていただけのこと。
幼い頃よりしっかりと基礎から習った己より、根本的に勝てるわけはないのだ。
父親の前で徹底的に打ちのめして見せれば、今後周りに何を言われようと、己のほうが実力があるとわかっているため、揺らぐことはないだろう。
何せ自分は目録の腕だ。
腕の一本も折ってやるのも、面白いかもしれない。
「さぁ宗十郎。お主も剣を齧ったのであれば、一度くらい正式に立ち合いをしてみたいだろう。ちゃんと父上に検分役もお願いしているし、母上もご覧だ。遠慮はいらんぞ、思う存分打ち込んで来るがいい」
馬鹿にしたように、仙太郎が宗十郎に木刀を投げ、構えた。
庭に面した縁側には、父と正妻の姿もある。
父はともかく、正妻は、ことのほか嬉しそうだ。
仙太郎と思考が全く同じなのだから、正妻も息子の地位を盤石にできるのであれば、妾の子など試合にかこつけて始末したいところなのだろう。
己の息子の腕を露程も疑っていないので、今日こそ憎っくき存在を蹴落とせると、目を輝かせている。