行雲流水 花に嵐
「あの女も、思い詰めたら恐ろしそうだな」
「んで、その手紙に五両包んできた」
「追加の頼み賃か」
「もしかすると、遊女の始末料かもしれねぇがな」
「女子は怖ぇな」
笑い飛ばしたものの、嫁からすると堪ったものではないのだろう。
遊女に入れあげるだけならまだしも、その金は家の経済を圧迫し、挙句一人息子まで攫われた。
なのに当のあるじは、いまだに遊女にご執心だという。
上月の家の経済状態から、おそらく財布を握っているのは隠居した父であろうし、今五両をぽんと出せる状態でもないだろう。
この五両は、嫁自身が己の持ち物などを売って、何とか拵えたものではないだろうか。
「いっそ馬鹿当主を斬ってしまおうか」
「おいおい旦那。いくら何でも、それはヤバいぜ」
要蔵が宗十郎の杯に酒を注ぎながら窘めた。
宗十郎は杯を干すと、傍らに置いていた刀を掴んで腰を上げる。
「亀屋に大きな動きはないと言ったな。手下どももか?」
ここのところ、宗十郎はあまりこそこそせずに町を歩いてみていた。
塒は掴まれないよう注意したが、それ以外では己の存在を知らせるためだ。
竹次か、その手下辺りが宗十郎を見つければ、新たな動きがあるだろう。
どいつかを、こちらで捕えることもできる。
「今のところは」
「そろそろ動いても良い頃だがな。まさか全員、その女子の移動に出張ってるんじゃねぇだろうな」
「竹次って奴は、やっぱり行ってねぇだろうよ。片桐の旦那も言ってたように、奴はおすずを逃がしたってぇドジがある。まずは上月の旦那を始末しねぇと、てめぇの身が危ういだろう。必死で旦那を探してるはずだ」
「そんじゃ、そろそろ見つけてくれたかもな」
呑気にそう言って、宗十郎は座敷を後にした。
「んで、その手紙に五両包んできた」
「追加の頼み賃か」
「もしかすると、遊女の始末料かもしれねぇがな」
「女子は怖ぇな」
笑い飛ばしたものの、嫁からすると堪ったものではないのだろう。
遊女に入れあげるだけならまだしも、その金は家の経済を圧迫し、挙句一人息子まで攫われた。
なのに当のあるじは、いまだに遊女にご執心だという。
上月の家の経済状態から、おそらく財布を握っているのは隠居した父であろうし、今五両をぽんと出せる状態でもないだろう。
この五両は、嫁自身が己の持ち物などを売って、何とか拵えたものではないだろうか。
「いっそ馬鹿当主を斬ってしまおうか」
「おいおい旦那。いくら何でも、それはヤバいぜ」
要蔵が宗十郎の杯に酒を注ぎながら窘めた。
宗十郎は杯を干すと、傍らに置いていた刀を掴んで腰を上げる。
「亀屋に大きな動きはないと言ったな。手下どももか?」
ここのところ、宗十郎はあまりこそこそせずに町を歩いてみていた。
塒は掴まれないよう注意したが、それ以外では己の存在を知らせるためだ。
竹次か、その手下辺りが宗十郎を見つければ、新たな動きがあるだろう。
どいつかを、こちらで捕えることもできる。
「今のところは」
「そろそろ動いても良い頃だがな。まさか全員、その女子の移動に出張ってるんじゃねぇだろうな」
「竹次って奴は、やっぱり行ってねぇだろうよ。片桐の旦那も言ってたように、奴はおすずを逃がしたってぇドジがある。まずは上月の旦那を始末しねぇと、てめぇの身が危ういだろう。必死で旦那を探してるはずだ」
「そんじゃ、そろそろ見つけてくれたかもな」
呑気にそう言って、宗十郎は座敷を後にした。