硝子玉
硝子玉
桐崎翠(きりさき あきら)さんは私が勤めているカフェの常連さんで、店長の友人。
毎日ランチが終わる頃にきて、夕方くらいまでいる。
そんな生活をしていて仕事はなにをしているのか気になったんだけど、少し仲良くなった頃に、両親の遺産と不動産収入で生活には困らないし、それに売れない作家もやっているんだと教えてくれた。
お店にいる間、翠さんは本を読んでいるか、キーボードに向かっているか。
あとは私をからかって遊んでるか。
……はっきりいって。
シルバーフレームの眼鏡を掛けた翠さんの長い指が、本のページをめくり、キーを打っているのは綺麗で。
ついつい見とれてしまい、そして目が合うたびにからかわれる羽目になる。
毎日毎日からかわれているけれど、だから翠さんが嫌いということはなく。
……寧ろ好き、だ。
けれど恋愛感情とまでいかなくても、それでも好意を持っていることをそれとなく示すと、途端に翠さんは拒絶してくる。
……俺は最低な人間だから。
そう云うときの、レンズの向こうの翠さんの目は、感情のない無機質な硝子玉みたいでちょっと悲しくなる。
毎日ランチが終わる頃にきて、夕方くらいまでいる。
そんな生活をしていて仕事はなにをしているのか気になったんだけど、少し仲良くなった頃に、両親の遺産と不動産収入で生活には困らないし、それに売れない作家もやっているんだと教えてくれた。
お店にいる間、翠さんは本を読んでいるか、キーボードに向かっているか。
あとは私をからかって遊んでるか。
……はっきりいって。
シルバーフレームの眼鏡を掛けた翠さんの長い指が、本のページをめくり、キーを打っているのは綺麗で。
ついつい見とれてしまい、そして目が合うたびにからかわれる羽目になる。
毎日毎日からかわれているけれど、だから翠さんが嫌いということはなく。
……寧ろ好き、だ。
けれど恋愛感情とまでいかなくても、それでも好意を持っていることをそれとなく示すと、途端に翠さんは拒絶してくる。
……俺は最低な人間だから。
そう云うときの、レンズの向こうの翠さんの目は、感情のない無機質な硝子玉みたいでちょっと悲しくなる。
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