硝子玉
「あの莫迦、
あんなにかまってちゃんオーラ全開の癖に!
なんですか、『俺は最低の人間だから』?
気を引きたいようにしか思えません!
私にあんなことした癖に、自分の方が傷ついてる顔して!
私がこれで納得するとでも……」

昨日あんなに泣いたはずなのに、涙がぽろぽろ零れ出る。
店長の前だというのに、みっともなくわんわん泣いてた。

「……夏帆ちゃんは翠のために、怒って泣くんだな」

「てん、ちょう……?」

顔を上げると、店長は淋しげに笑っていた。

「あいつのまわり、ずーっとそんな人間、いなかった。
ほら、よくある話だろ?
金持ちの家の、愛情を知らない子供。
あれが翠」

「……はい」

……よくあるのかはわからないけど。
なんとなく想像はつく。

「環境のせいなのか、あいつ自身が壊れてんのか。
ほんといろいろ問題起こしてくれたよ。
……女の子妊娠させたり、とか」
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