硝子玉
……だから。

「……店長。
私、店、辞めません。
それから今日、お休みください」

「……翠を頼むな」

店長に見送られて店を出る。
十分の距離を五分で歩き、渡された鍵で集中玄関を開けた。

——これで第一次防衛ラインは突破できるから、って。

エレベーターで最上階に上がり、インターホンを押す。

 ピンポーン。

中から反応はない。
でも、こんなことで怯んだりしない。

 ピンポンピンポンピンポンピンポン。

『……煩い。帰れ』

「帰りません!」

ちょっと待ったけど出てくる気配なし。
再びボタンを押す。
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