硝子玉
 ピンポンピンポンピンポンピンポン。

「帰れ。警察呼ぶぞ」

不機嫌そうに翠さんは顔を見せたけれど、チェーンは外してくれない。
閉められそうになったドアに慌てて手を突っ込んで止める。

「……指、折られたいの?」

「やれるもんならやってみろ、です」

「……はぁーっ。手、どけて」

恐る恐る手を抜くと、一度閉められはしたものの、チェーンを外してドアを開けてくれた。

無言で部屋の中に戻っていく翠さんについて入る。

「で。
なにしにきたの?
昨日の続き?」

どさっとソファーに座った翠さんの前にはまだ昼前だというのに酒瓶。
グラスにその中身を注いで煽るように飲み干すと、翠さんは口元を歪ませた。

「そうじゃなくて」

「なに?久司から話、聞かなかったの?」
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