硝子玉
「……はい」

開いたドアに中に入り、エレベーターで最上階へ。
インターホンを押しかけてやめた。

「失礼しまーす……」

恐る恐るドアを開けて中に入る。
リビングに行くとソファーにぐったりなった翠さんがいた。

「……大丈夫、ですか?」

「……腹、減った」

ぐぅーっ、と派手なおなかの音が響いて、思わず笑いが漏れる。

「すぐに温めますね」

「……早く」

キッチンを借りてお鍋——シチューを温める。
適当なお皿によそって、スプーンを添えて差し出した。
受け取ると、翠さんは眼鏡が曇ることなどお構いなしに、夢中で食べている。

「おかわり」

「あ、はい」
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