硝子玉
見つめ……ているのかな。

レンズがない分、いつもよりもいっそう、冷たい硝子みたい。
そこに私は映っているけれど、翠さんにはちゃんと見えているのかな……。

「えっ、あっ、やめ……んっ」

翠さんの唇が私の口を塞ぐ。
優しさの欠片もなくて、ただ苦しい。

「……やだ。……やめて。
やめて!!」

首筋にふれていた翠さんの唇が離れた。
私から離れると大きなため息。
涙目で見上げると、硝子玉が私を見下ろした。

「……帰れ」

「……」

「帰れ!」

弾かれたように立ち上がり、部屋をあとにする。
家に帰りながら涙がぽろぽろ零れてた。

……なんで、あんな。
あんな翠さん、知らない。
いつも翠さんは、私をからかって嬉しそうで。
なのに、なんで。
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