差し伸べた手
不意の出会い
不規則な緑のグラデーションが広がる世界。
それを分かつようにくねくねと道が続いている。
その道を長靴姿で不器用に歩く亜子(あこ)。
歩き方が都会的ででこぼこ道に慣れていないというのがすぐにわかる。
地面を見ながらこけないように歩幅を小さくして注意深く歩き、その道の先にある小さな小屋を目指す。
集中している視線の片隅に動く物を感じて足を止めてそちらの方向へ体を向けた。
亜子は驚いて大きな声をあげる。
普段見ない生き物だからだ。
それは猪でも鹿でもなく人間だった。
現実であることを否定するように再び前を見て歩く。係わりたくないという一心で。
「うー、うー」とその生き物から声が聞こえる。
聞こえないふりをしようか迷ったが、あまりにも不自然だし、ここで何かあれば問題になるのは間違いない。
諦めの境地でその生き物に近づき声をかけた。
「大丈夫ですか?」
「水・・・」
聞いてしまったからには仕方がない。小屋の扉を開けてコップに水を注ぎその生き物に手渡した。
体の上体を少し起こしそれを一気に飲み干し目的を達したかのように再び後ろに倒れた。
「あのー、ここで寝られると困るんですが」
目を閉じていた生き物は再び目を開け亜子に向かって言った。
「・・・お腹減った」
ここで倒れられても困るので亜子は仕方なくその男に手を差し伸べた。男はその手を掴みようやく立ち上がった。
精も根も尽き果てているようには見えたが、その手には力があるように思えた。
それを分かつようにくねくねと道が続いている。
その道を長靴姿で不器用に歩く亜子(あこ)。
歩き方が都会的ででこぼこ道に慣れていないというのがすぐにわかる。
地面を見ながらこけないように歩幅を小さくして注意深く歩き、その道の先にある小さな小屋を目指す。
集中している視線の片隅に動く物を感じて足を止めてそちらの方向へ体を向けた。
亜子は驚いて大きな声をあげる。
普段見ない生き物だからだ。
それは猪でも鹿でもなく人間だった。
現実であることを否定するように再び前を見て歩く。係わりたくないという一心で。
「うー、うー」とその生き物から声が聞こえる。
聞こえないふりをしようか迷ったが、あまりにも不自然だし、ここで何かあれば問題になるのは間違いない。
諦めの境地でその生き物に近づき声をかけた。
「大丈夫ですか?」
「水・・・」
聞いてしまったからには仕方がない。小屋の扉を開けてコップに水を注ぎその生き物に手渡した。
体の上体を少し起こしそれを一気に飲み干し目的を達したかのように再び後ろに倒れた。
「あのー、ここで寝られると困るんですが」
目を閉じていた生き物は再び目を開け亜子に向かって言った。
「・・・お腹減った」
ここで倒れられても困るので亜子は仕方なくその男に手を差し伸べた。男はその手を掴みようやく立ち上がった。
精も根も尽き果てているようには見えたが、その手には力があるように思えた。
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