差し伸べた手
バイヤーになってからの亜子は懸命に働いた。
様々な展示会や新作発表会をまわり一歩先の流行を肌で感じ若者に受けそうな商品を仕入れ次々と店頭に並べていった。
亜子の仕入れた商品の売上は好調で亜子自身も手応えを感じていた。
しかし、バイヤーとして仕入額も上がってくると仕入先から条件を出されたりすることもあり亜子を苦しる。
売れ筋の商品を入れるなら、こちらの商品も抱き合わせで買わないと渡さないというようなことで、業界ではよくある話だが亜子は納得出来なかった。
どう考えても売れない商品を押しつけてくるのである。
要らない商品を無理矢理買うこと自体もちろんいやだったし、それ以上にそれらを買うことによってその分、目をつけている商品が仕入れられないからだ。
決められた仕入額でやりくりするシステムだったし、アパレルというのは非常に流行に左右される商品で、今良いと思った物も次回の仕入では売れ行きが変わってしまうからだった。
それにシーズンも関係してくるので余計な在庫を抱えてしまうと一年間倉庫に眠ってしまうことになり余計に売れなくなってしまうのである。
このことを店長には相談したが
「亜子、どんな世界でもどうにもならないことってあるの。理不尽な事なんて山ほどあるわ。納得出来ないことばかりで亜子は怒るかも知れないけど、それが事実なの。平等って言葉は存在しないし、努力と成果が必ずしも比例する世界でもない。これからもっともっと色んな問題に直面すると思うけどあなたなら乗り越えられるわ」と
言った。
店長の言葉通り、バイヤーとしての道は厳しかった。
亜子が仕入れた分の在庫の処理、売上の管理、価格調整等労働時間はどんどん長くなっていき、一体自分が一日何時間働いているのか、一ヶ月で何日休みを取っているのかもわからなくなっていた。
バイヤーとして三年が過ぎた頃から亜子には変化が芽生え始める。
今まで数字の為にただ服を売り、気に入って仕入れた商品も売れなければすぐに処分品として扱い、大好きだった洋服自体に目がいかなくなっていた。
ただただ売れる物、時には品質に目をつぶり売上単価が高い物を優先して入れたり、そんな自分がたまらなく嫌にだった。
そんな状況を変えるべく、少しでも品質が優れていて着心地も良く若者に受けるデザインを仕入れる方向に転換したが、そういった商品は値段が高く店舗で販売しても売上には繋がらなかった。
ギリギリまで値段を下げて販売してさばいたとしても利益率が少なくて落胆した。
若者の流行はめまぐるしく変わっていくので、ワンシーズンしか着ないので品質は二の次だと考えるべきなのだが、亜子はそれに対して心にどこか違和感があった。
様々な展示会や新作発表会をまわり一歩先の流行を肌で感じ若者に受けそうな商品を仕入れ次々と店頭に並べていった。
亜子の仕入れた商品の売上は好調で亜子自身も手応えを感じていた。
しかし、バイヤーとして仕入額も上がってくると仕入先から条件を出されたりすることもあり亜子を苦しる。
売れ筋の商品を入れるなら、こちらの商品も抱き合わせで買わないと渡さないというようなことで、業界ではよくある話だが亜子は納得出来なかった。
どう考えても売れない商品を押しつけてくるのである。
要らない商品を無理矢理買うこと自体もちろんいやだったし、それ以上にそれらを買うことによってその分、目をつけている商品が仕入れられないからだ。
決められた仕入額でやりくりするシステムだったし、アパレルというのは非常に流行に左右される商品で、今良いと思った物も次回の仕入では売れ行きが変わってしまうからだった。
それにシーズンも関係してくるので余計な在庫を抱えてしまうと一年間倉庫に眠ってしまうことになり余計に売れなくなってしまうのである。
このことを店長には相談したが
「亜子、どんな世界でもどうにもならないことってあるの。理不尽な事なんて山ほどあるわ。納得出来ないことばかりで亜子は怒るかも知れないけど、それが事実なの。平等って言葉は存在しないし、努力と成果が必ずしも比例する世界でもない。これからもっともっと色んな問題に直面すると思うけどあなたなら乗り越えられるわ」と
言った。
店長の言葉通り、バイヤーとしての道は厳しかった。
亜子が仕入れた分の在庫の処理、売上の管理、価格調整等労働時間はどんどん長くなっていき、一体自分が一日何時間働いているのか、一ヶ月で何日休みを取っているのかもわからなくなっていた。
バイヤーとして三年が過ぎた頃から亜子には変化が芽生え始める。
今まで数字の為にただ服を売り、気に入って仕入れた商品も売れなければすぐに処分品として扱い、大好きだった洋服自体に目がいかなくなっていた。
ただただ売れる物、時には品質に目をつぶり売上単価が高い物を優先して入れたり、そんな自分がたまらなく嫌にだった。
そんな状況を変えるべく、少しでも品質が優れていて着心地も良く若者に受けるデザインを仕入れる方向に転換したが、そういった商品は値段が高く店舗で販売しても売上には繋がらなかった。
ギリギリまで値段を下げて販売してさばいたとしても利益率が少なくて落胆した。
若者の流行はめまぐるしく変わっていくので、ワンシーズンしか着ないので品質は二の次だと考えるべきなのだが、亜子はそれに対して心にどこか違和感があった。