差し伸べた手
これで本当に売りたい商品を売ることが出来る。

人に勧めたい、そして着心地がよい洋服を自信もって勧めることが出来る。

洋服は人の心もいやせる物だと亜子は思っている。

好きな人とデートに行くときにお気に入りの洋服を選んで着ていくが、それは相手を喜ばせるのではなく、このお気に入りの洋服を着て好きな人に会えるという喜びを感じているのだと考えている。

好きな洋服を着ている時は、その洋服が少しでも良く見えるように姿勢もよくなるし、髪型も整えメイクも施す。

気分は高揚し優しい気持ちにもなる。

だから女性の多くはウエディングドレスを着たがるのだ。

豪華で清楚で特別な服、袖を通しただけで幸せな気分になる。洋服にはそんな力があるのだと信じている。

寝るときやゆっくり休みたい時には着心地の良い素材で締め付けがゆったりしている服を着ていると心が自然とリラックスできる。

そんな洋服の力を多くの人に感じて欲しかった。


この地に引っ越しして家の中が片付いた頃、ネットショップをマニュアル片手に作成した。

商品数も少なくシンプルな店舗ページだったため、何とか作り上げた。

商品を紹介するページはスラスラと書けた。

店頭で服を売るときも、ここのメーカーの洋服はいくらでも説明出来たので、そのまま自分の言葉で文章を書き込む。

そしてメーカーに頼んで、職人さんがミシンを踏んでいる画像を撮ってもらいそれも掲載し、いかにこの商品が丁寧に作られて素晴らしいかと紹介していった。

オープン当初はアクセス数も伸びず商品も売れなかったが、大量生産、大量消費の商品に飽きたお客さんが一点物を求めて徐々に注文が入るようになっていた。

一度着ると絶対好きになる商品だと自信があった通り、その後リピーターのお客さんがシーズン毎に新商品を購入してくれたのだった。
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