差し伸べた手
すぐに社長は被害届を提出した。
その後、小川の自宅のパソコンからは転売の記録、残りの商品、更に直の画像が見つかりすぐに直の潔白は証明された。
社長には
「お前がすぐに行動しないからだ。つまらない恩義をかけて会社を窮地に追いやっては何の意味もないだろう。昔からお前には決断力が欠けている。これから会社を背負って行くには冷酷にならなきゃいけないことがあるのだ」
と責められる。
直は何も言い返せず自分は甘かったのだと痛感させられた。
小川が警察に連行されたとの報道で直が犯人だという濡れ衣はすっかり晴れ、週刊誌も謝罪の文面を掲載した。
しかし社内で社長の息子という身分がばれた直は更にやりにくくなっていた。
あれだけ直を非難した人達が手のひらを返したのである。
直の席にわざわざ来て
「吉沢さんじゃないと初めから思っていた」 と言いに来たものや「初めから私は味方だった」と言うものもいた。
更に
「昔から好きだった」と告白してきた者さえいた。
それ以外の者も腫れ物をさわるような扱いに変わっていった。
直は人間不信に陥り今まで社長の座を目指して頑張ってきたがその気力の糸がプツンと切れた。
直は何も変わっていないのに、今までは変人扱いされ、犯人扱いし、その後味方だとコロコロと変わることについていけなかった。
その様子を見ていて社長は直に言った。
「お前を社長にするのは二年後と考えていた。しかしこんなことがあって社内で仕事がやりにくいだろう。これがいい機会だから予定を繰り上げて来月からお前に社長をやってもらうことにする。私は会長になってお前をサポートするつもりだ。社内では他の社員を守ろうとした事実を知って、今お前の株も上がっている。企業イメージ的にも良いし社員もついてくるだろう」
「でも社長、まだ私はそんな器じゃありません。現に私は今回間違った決断をして会社に迷惑を掛けました。結局尻ぬぐいは社長がしましたし転売の疑いが掛けられたときにはどれだけ自分は誰にも信頼されていないかが浮き彫りとなりました。社内で誰も味方が居ませんでしたし、それどころか嫌われていました。今の反応は私が社長の息子とわかったからです。その肩書きがなければ私の罪が晴れたとしても何ら変わらなかったと思います」
直は社長、いや父親に対して意見をしたことは一度もなく、今自分が初めて父親の言うことに逆らっていると思い信じられなかった。
「直、社長というのは資質のあるものがなるのではない。現在、社長でも、皆最初は普通の人なのだ。社長になって初めて成長していく、成長せざるを得ないからだ。それに物事はタイミングというのが重要で計画していたことでもタイミングを間違えば同じものでも失敗してしまうこともある。今お前が社長になるタイミングなのだ。それに味方がいないといったが、今後味方なんてもっといなくなる。それも味方の振りして敵という人が集まってくるのだ。元々社長というのは孤独なのだよ」
そういえば親父は一度言ったことは絶対に曲げない性格だ。
直がどれだけいっても結論を変えることはない。
そのぶれない決断力がここまで会社を大きくしていったのだ。
迷いという言葉は親父にはない。
このまま直が何を言っても無駄な時間を費やすだけだ。
直は何も言わずに社長室を去った。
その後、小川の自宅のパソコンからは転売の記録、残りの商品、更に直の画像が見つかりすぐに直の潔白は証明された。
社長には
「お前がすぐに行動しないからだ。つまらない恩義をかけて会社を窮地に追いやっては何の意味もないだろう。昔からお前には決断力が欠けている。これから会社を背負って行くには冷酷にならなきゃいけないことがあるのだ」
と責められる。
直は何も言い返せず自分は甘かったのだと痛感させられた。
小川が警察に連行されたとの報道で直が犯人だという濡れ衣はすっかり晴れ、週刊誌も謝罪の文面を掲載した。
しかし社内で社長の息子という身分がばれた直は更にやりにくくなっていた。
あれだけ直を非難した人達が手のひらを返したのである。
直の席にわざわざ来て
「吉沢さんじゃないと初めから思っていた」 と言いに来たものや「初めから私は味方だった」と言うものもいた。
更に
「昔から好きだった」と告白してきた者さえいた。
それ以外の者も腫れ物をさわるような扱いに変わっていった。
直は人間不信に陥り今まで社長の座を目指して頑張ってきたがその気力の糸がプツンと切れた。
直は何も変わっていないのに、今までは変人扱いされ、犯人扱いし、その後味方だとコロコロと変わることについていけなかった。
その様子を見ていて社長は直に言った。
「お前を社長にするのは二年後と考えていた。しかしこんなことがあって社内で仕事がやりにくいだろう。これがいい機会だから予定を繰り上げて来月からお前に社長をやってもらうことにする。私は会長になってお前をサポートするつもりだ。社内では他の社員を守ろうとした事実を知って、今お前の株も上がっている。企業イメージ的にも良いし社員もついてくるだろう」
「でも社長、まだ私はそんな器じゃありません。現に私は今回間違った決断をして会社に迷惑を掛けました。結局尻ぬぐいは社長がしましたし転売の疑いが掛けられたときにはどれだけ自分は誰にも信頼されていないかが浮き彫りとなりました。社内で誰も味方が居ませんでしたし、それどころか嫌われていました。今の反応は私が社長の息子とわかったからです。その肩書きがなければ私の罪が晴れたとしても何ら変わらなかったと思います」
直は社長、いや父親に対して意見をしたことは一度もなく、今自分が初めて父親の言うことに逆らっていると思い信じられなかった。
「直、社長というのは資質のあるものがなるのではない。現在、社長でも、皆最初は普通の人なのだ。社長になって初めて成長していく、成長せざるを得ないからだ。それに物事はタイミングというのが重要で計画していたことでもタイミングを間違えば同じものでも失敗してしまうこともある。今お前が社長になるタイミングなのだ。それに味方がいないといったが、今後味方なんてもっといなくなる。それも味方の振りして敵という人が集まってくるのだ。元々社長というのは孤独なのだよ」
そういえば親父は一度言ったことは絶対に曲げない性格だ。
直がどれだけいっても結論を変えることはない。
そのぶれない決断力がここまで会社を大きくしていったのだ。
迷いという言葉は親父にはない。
このまま直が何を言っても無駄な時間を費やすだけだ。
直は何も言わずに社長室を去った。