差し伸べた手
「社長、いや、親父、僕はあなたと一緒に仕事がしたいです。これからもずっと」
社長はゆっくりと頷いた。
これを決意させたのは母親の言葉だった。
母親からの留守電を聞いて翌日に改めて謝った。
「母さん、本当に迷惑掛けてごめんね。そしてありがとう」
「いいの。あなたが無事ならそれでいいの。そんなことより、一つ誤解をといておきたいのだけど、お父さんはあなたのことを本当に愛しているのよ。ただ愛情表現が下手というか不器用なの。あなたが小学校に入学した時も、時々あなたの後ろをそっとつけていっていたのよ、心配だからってね。私はそれなら学校まで送ってあげればというと、直には自立する力も必要だからって。それに高校受験の日もあなたの制服の内ポケットにお守りを入れておいたのよ。わざわざ神社まで自分で取りに行ってね。直接直に渡せばと言ったのだけど、恥ずかしくて出来ないのよね。それでそっとポケットに忍ばせたの。それにあなたがお父さんの会社で入社式があった日は珍しく飲んで帰って上機嫌だったのよ。あなたと一緒に仕事をするのが夢だった。それが叶ったって」
直は何も気づいていなかった。
「それにね、直がいなくなった時には、あなたのことを縛りすぎたって後悔していたわ。会社も創設当時は従業員に対して規則が多かったのよ。多いといっても他の会社と変わらない感じだったのだけど。でも直が自分でこれが欲しい、あれがしたいと言わないことに気づいて、もっと自由にしてやれば伸び伸びと育てれば、押さえつけすぎたのではないかって悩んでね。それでまず社内を自由にし始めたの。出退社の時間や働き方や休日の取り方とかなるべく社員の自主性を重んじたいと言ってね。それから急激に業績が伸びたのよ。でもね、いざ自分の子供を自由にするのって勇気がいるのよ。危ないところにいかないように、どこかへ行ってしまわないようにするものよ。だから早くに会社を譲って直の自由にさせたいって考えていたのよ」
直は父親の思いを聞いて涙が出た。
「あなたが居なくなったときもカードや口座を凍結したのだけど、二日ほどたつと直を自由にしてあげなきゃといって、すぐに解除したのよ。あなたが見つかったと調査会社から連絡があったときも、直が帰りたくないと言ったら連れて帰らないでほしい、ただ無事かどうかだけ確認したいって」
そういえばカードが使用出来なかったので、それ以降一度も使うことがなかったので解除されていることに気づかなかったのだ。
「だから直が帰ったらあいつの好きに選べばいいって」
その話を聞いて直は親父と一緒に働きたいと強く思ったのだった。
社長はゆっくりと頷いた。
これを決意させたのは母親の言葉だった。
母親からの留守電を聞いて翌日に改めて謝った。
「母さん、本当に迷惑掛けてごめんね。そしてありがとう」
「いいの。あなたが無事ならそれでいいの。そんなことより、一つ誤解をといておきたいのだけど、お父さんはあなたのことを本当に愛しているのよ。ただ愛情表現が下手というか不器用なの。あなたが小学校に入学した時も、時々あなたの後ろをそっとつけていっていたのよ、心配だからってね。私はそれなら学校まで送ってあげればというと、直には自立する力も必要だからって。それに高校受験の日もあなたの制服の内ポケットにお守りを入れておいたのよ。わざわざ神社まで自分で取りに行ってね。直接直に渡せばと言ったのだけど、恥ずかしくて出来ないのよね。それでそっとポケットに忍ばせたの。それにあなたがお父さんの会社で入社式があった日は珍しく飲んで帰って上機嫌だったのよ。あなたと一緒に仕事をするのが夢だった。それが叶ったって」
直は何も気づいていなかった。
「それにね、直がいなくなった時には、あなたのことを縛りすぎたって後悔していたわ。会社も創設当時は従業員に対して規則が多かったのよ。多いといっても他の会社と変わらない感じだったのだけど。でも直が自分でこれが欲しい、あれがしたいと言わないことに気づいて、もっと自由にしてやれば伸び伸びと育てれば、押さえつけすぎたのではないかって悩んでね。それでまず社内を自由にし始めたの。出退社の時間や働き方や休日の取り方とかなるべく社員の自主性を重んじたいと言ってね。それから急激に業績が伸びたのよ。でもね、いざ自分の子供を自由にするのって勇気がいるのよ。危ないところにいかないように、どこかへ行ってしまわないようにするものよ。だから早くに会社を譲って直の自由にさせたいって考えていたのよ」
直は父親の思いを聞いて涙が出た。
「あなたが居なくなったときもカードや口座を凍結したのだけど、二日ほどたつと直を自由にしてあげなきゃといって、すぐに解除したのよ。あなたが見つかったと調査会社から連絡があったときも、直が帰りたくないと言ったら連れて帰らないでほしい、ただ無事かどうかだけ確認したいって」
そういえばカードが使用出来なかったので、それ以降一度も使うことがなかったので解除されていることに気づかなかったのだ。
「だから直が帰ったらあいつの好きに選べばいいって」
その話を聞いて直は親父と一緒に働きたいと強く思ったのだった。