クリムゾン・プロトコル
無垢で無邪気で、無知で、ひとりじゃなにひとつ満足にできなくて、なんでも教えてあげなきゃならなくて。

甘ったれかと思いきや、実は人を頼るのすらへたで、できないくせに自分の足で立ちたがるバカで。

だけど愛しいの。

——時折、頭に来るくらい。


* * *


「なにやってるの!」

「困ってるって言われたの」


どう考えたって嘘だよ、そんなの!

泣きたい気持ちで青くんと一緒に紅未子の手を引っぱって、アイスクリームショップの店先に戻ってきた。

ため息と共にオープンテラスの椅子に身を沈める。


「今度勝手にどこか行ったら、本当に青くんと手繋いで歩いてもらうからね」

「弟と手繋ぐなんて、あり得ない」

「俺の台詞だ」


じろっと姉弟がにらみ合った。

私は紅未子を青くんに任せ、オーダーしておいたアイスをレジで受け取ってきた。戻ったときには事情聴取が始まっていた。


「誰がどう困ってたって?」

「あの男の子たちのひとりがね、駅の向こうにいるから、助けてほしいって」

「なにを」

「…わからない、でも困ってるからって」

「どんなふうに」

「…人が困ってるときに、そんなこと、聞く?」


形のいい眉をひそめて首をかしげる紅未子に、青くんが顔を覆ってうなだれた。

紅未子はわかっているのかいないのか、紅未子の言っている"駅の向こう"はホテル街だ。

困っていたらしい他校の男の子数人に囲まれた紅未子を、間一髪のところで青くんが救い出したのだ。
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