クリムゾン・プロトコル
「なにに困ってるのか知りもしないで、どう助けてやるつもりだったんだ」

「でも、私が行けば、助かるって…」

「なにもできないくせに、一人前に首だけ突っ込もうとしたんだな?」


さすがに青くんの言葉もきつい。私はしょげる紅未子にアイスを渡した。

ひとりだけコーンでなくカップなのは、青くんが強制的にそうさせたからだ。不器用な紅未子は、毎度コーンのお尻からぼたぼたと中身を垂らす。今日着ているTシャツの持ち主である青くんは、たまったものじゃないと思ったんだろう。

五月も半ばの週末、久しぶりに三人で買い物に出てきた。続く夏日のおかげで、道行く人の恰好も開放的だ。

青くんは午後から部活なので、彼だけ制服。紅未子はいつも通り、ボーイフレンドファッションとでもいうのか、全身借り物みたいなシルエット。だけどとんでもなくかわいい。

この、男の子の服を借りてますという服装は、余計な想像をかきたてて、むしろ逆効果なんじゃないかと最近思えてきた。

半分ほど食べたところで、「ほら」と青くんが自分のと紅未子のを交換した。紅未子が迷いに迷って、最終的に泣く泣くあきらめた種類のアイスを何気なく注文した青くん。誰よりも紅未子に厳しくて、結局一番甘い。

予想通り、紅未子が後先考えずにかぶりついたコーンからはキャラメルのアイスが糸を引いて垂れた。

嘘に決まってるでしょ、紅未子。あんな、いきなり紅未子の手を引いてどこかで連れていこうとするような人たちの言葉、本当なわけないでしょ。

そう諭しても紅未子には通じない。きっと『どうして?』と不思議そうに聞いてくるだけだ。


──どうして嘘に決まってるの?


どうしてって、あの男の子たちの目つきを見れば、わかるでしょ。不正直で、これから悪さをするのを楽しんでいますって顔、してたでしょ。
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