そのとき、君の隣で笑うのは
校庭を見ると、ぞろぞろと身体に馴染んでいない制服を着た生徒達が下校していた。
「1年生って入学式だけだからいいよねー。わたしも帰りたい」
休み時間になり、窓際の鳴子の席へ。
空いている前の椅子に腰掛けて、鳴子の机に頬杖をつきながらぼやく。
「そのセリフ毎年聞いてる気がする」
「だって思わない?しかも、今年は受験だぞっていう教師のプレッシャーから授業が始まるからさらに嫌になる。
みんなもなんかピリッとしちゃってさ、早く帰りたい。それか早く部活行きたい。いーなぁ1年生」
そうやって紫海が現実逃避をしている間に次の授業の準備をし始める鳴子。
さすがちゃんとしてらっしゃる。
「1年生っていえば、あの子もそのくらいじゃなかったっけ?なんだっけほら、昔、紫海に懐いてた近所の男の子」
「・・・あぁ、そういえばそうだね。懐かしいなぁ」
「会わないの?家向かい同士なのに」
「うーん、そうだねぇ。全然会わなくなったね。忙しいんじゃない?」
あの頃は当たり前のように「しうみちゃん!しうみちゃん!」と懐かれて、毎日のように遊んでいたのは小学生までの話。
中学に上がる頃には背伸びをしたい年頃の紫海に2コ下の小学生は疎ましい存在で。
あいつを避けてからは、会うことはなくなった。
家が向かいでも機会がなければこんなものなのかと、いつの間にか彼の存在も今では思い出の中で。
あの時は酷いことをしたなぁと、避けた時の傷ついた顔を思い出しては、
あいつの声も思い出せないくらい遠い過去のものとなっていた。
今どうしているのかすら知らない。
それ以上続く内容もないこの話題は、授業を知らせるチャイムと共に終わりを告げた。