ピュア・ラブ2 ~それからの~
1
私は初めての恋をしている。
それはまだ始まったばかりのものだ。
初めて離れたくないと思った。
橘君と暫く海を眺めていた。
離れていた月日はどれくらいだっただろう。一人、眺めていた海は味気なかった。
だけど、隣に橘君がいるだけで、海も照り付ける太陽も、それこそ、海の家で買った高いジュースも、初めて見るように新鮮だった。
キスをしてしまったことが恥ずかしくて、私は橘君の顔をまともに見られていない。
あの時は、会えた嬉しさだったのか、迎えに来てくれた喜びだったのか、それとも、私を忘れないでいてくれたことの感謝だったのか、そのどれもがまぜこぜになって、自分でも初めてのふれあいなのに、大胆にキスを強請ってしまった。
周りの目も気にせずに。
涙が止まり、落ち着きを取り戻すと、自分のした大胆さに顔から火が出るほど恥ずかしく、海に来ていた家族づれなどのたくさんの視線が、自分を見ているようで顔を上げられなかった。
「黒川」
「え? あ、はい」
並んで砂浜に座っていたけれど、じりじりと太陽が照り付け、暑い。
だけど、そんなことも感じないくらい、私は一人、悶々としてしまっていた。
話しかけられて、隣に座っていた橘君を見ると、つい、唇に視線が言ってしまい、自分のむっつりな部分が見えてしまい、少なからず落ち込む。
「帰ろうか」
「あ、うん」
すっと立ち上がった橘君は、すっと手を差し出してくれた。
私は、素直にその手を取る。
キス一つ、告白一つでこうも気持ちの持ちようと、距離は縮まるものなのか。
告白を聞くまでだったら、きっと、橘君は私に触れることを避けて、立つのをじっと待っていただけかもしれない。
でも二人の間にそんな遠慮がちな距離はもうない。
手をつないだまま、服についた砂を払ってくれ、にっこりと変わらない笑顔を見せてくれた。
私はそれを嫌悪することなく、受け止める。
「車なんだ」
橘君は車を止めてあるだろう方向を指さした。
一度乗ったことがある車だろうか。
照り付ける太陽は暑く、握られた手も少し汗ばんでいる。
歩くと沈んでしまう砂浜を、ゆっくりと踏みしめて行く。それだけでも足の筋力を使い、汗がどんどん出てくる。
暑さが嫌いで苦手な私は、汗をかくことも嫌いだ。胸の谷間や背中に流れる汗が気持ち悪い。
砂浜からコンクリートの道にようやく出ると、サンダルについた砂をお互い払って、車に乗り込んだ。
車は一度乗せてもらったのと同じだった。
「ちょっと熱気を逃がすから待ってて」
車のドアを開けると、外よりも暑い空気が放たれた。
4枚のドアを開け、橘君はクーラーを入れた。
「クーラーが効くまでにも時間がかかるな」
「そうだね」
唸るような音を出して、車のクーラーは懸命に冷やそうとしている。
「帽子を忘れたの?」
助手席側に立っていた私の隣に、エンジンをかけた橘君が立った。
頭に手を当て、暑くなっている私の頭を手で団扇のように煽ってくれる。
「うん、つい」
「てっぺんが赤くなっているから、シャンプーするとき痛いぞ」
「え? 本当?」
髪の分け目が赤くなっているらしく、そう教えてくれた。
自分の頭皮をそっと触ってみると、確かにひりつく。
「黒川」
「ん?」
隣に立つ橘君に呼ばれ、少し見上げると、まぶしかった視界が、彼の影で日陰になった。
すると、私の唇に橘君の唇が軽く触れた。
今度は意識していなかったキスだけに、両手で口元を隠して顔が一瞬で熱くなった。
「ごめん、俺、何か……」
橘君も自分で思わずしてしまったことなのだろう。
彼も照れて、頭を掻いていた。
結構、いい年齢になっていると思う二人が、キスくらいのことで、初々しく照れる様は、周りが見たらなんと思うだろうか。
目だけをきょろきょろと回して、駐車場をみると、あたりには誰もいなく、ほっとした。
それはまだ始まったばかりのものだ。
初めて離れたくないと思った。
橘君と暫く海を眺めていた。
離れていた月日はどれくらいだっただろう。一人、眺めていた海は味気なかった。
だけど、隣に橘君がいるだけで、海も照り付ける太陽も、それこそ、海の家で買った高いジュースも、初めて見るように新鮮だった。
キスをしてしまったことが恥ずかしくて、私は橘君の顔をまともに見られていない。
あの時は、会えた嬉しさだったのか、迎えに来てくれた喜びだったのか、それとも、私を忘れないでいてくれたことの感謝だったのか、そのどれもがまぜこぜになって、自分でも初めてのふれあいなのに、大胆にキスを強請ってしまった。
周りの目も気にせずに。
涙が止まり、落ち着きを取り戻すと、自分のした大胆さに顔から火が出るほど恥ずかしく、海に来ていた家族づれなどのたくさんの視線が、自分を見ているようで顔を上げられなかった。
「黒川」
「え? あ、はい」
並んで砂浜に座っていたけれど、じりじりと太陽が照り付け、暑い。
だけど、そんなことも感じないくらい、私は一人、悶々としてしまっていた。
話しかけられて、隣に座っていた橘君を見ると、つい、唇に視線が言ってしまい、自分のむっつりな部分が見えてしまい、少なからず落ち込む。
「帰ろうか」
「あ、うん」
すっと立ち上がった橘君は、すっと手を差し出してくれた。
私は、素直にその手を取る。
キス一つ、告白一つでこうも気持ちの持ちようと、距離は縮まるものなのか。
告白を聞くまでだったら、きっと、橘君は私に触れることを避けて、立つのをじっと待っていただけかもしれない。
でも二人の間にそんな遠慮がちな距離はもうない。
手をつないだまま、服についた砂を払ってくれ、にっこりと変わらない笑顔を見せてくれた。
私はそれを嫌悪することなく、受け止める。
「車なんだ」
橘君は車を止めてあるだろう方向を指さした。
一度乗ったことがある車だろうか。
照り付ける太陽は暑く、握られた手も少し汗ばんでいる。
歩くと沈んでしまう砂浜を、ゆっくりと踏みしめて行く。それだけでも足の筋力を使い、汗がどんどん出てくる。
暑さが嫌いで苦手な私は、汗をかくことも嫌いだ。胸の谷間や背中に流れる汗が気持ち悪い。
砂浜からコンクリートの道にようやく出ると、サンダルについた砂をお互い払って、車に乗り込んだ。
車は一度乗せてもらったのと同じだった。
「ちょっと熱気を逃がすから待ってて」
車のドアを開けると、外よりも暑い空気が放たれた。
4枚のドアを開け、橘君はクーラーを入れた。
「クーラーが効くまでにも時間がかかるな」
「そうだね」
唸るような音を出して、車のクーラーは懸命に冷やそうとしている。
「帽子を忘れたの?」
助手席側に立っていた私の隣に、エンジンをかけた橘君が立った。
頭に手を当て、暑くなっている私の頭を手で団扇のように煽ってくれる。
「うん、つい」
「てっぺんが赤くなっているから、シャンプーするとき痛いぞ」
「え? 本当?」
髪の分け目が赤くなっているらしく、そう教えてくれた。
自分の頭皮をそっと触ってみると、確かにひりつく。
「黒川」
「ん?」
隣に立つ橘君に呼ばれ、少し見上げると、まぶしかった視界が、彼の影で日陰になった。
すると、私の唇に橘君の唇が軽く触れた。
今度は意識していなかったキスだけに、両手で口元を隠して顔が一瞬で熱くなった。
「ごめん、俺、何か……」
橘君も自分で思わずしてしまったことなのだろう。
彼も照れて、頭を掻いていた。
結構、いい年齢になっていると思う二人が、キスくらいのことで、初々しく照れる様は、周りが見たらなんと思うだろうか。
目だけをきょろきょろと回して、駐車場をみると、あたりには誰もいなく、ほっとした。
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