江戸女と未来からの訪問者
 美味しゅうごじゃった。美味しゅうごじゃった。

 池田屋の握り飯は、なかなかいけるのう。

 満足じゃ。満足じゃ。余は大満足じゃ。

 やはり食事はお米に限るのう。

 洋食などを食す輩の気が知れん。

 米を食え、米を。

 明日は、大黒屋の握り飯でも食してみるか。

 楽しみじゃのう。



 腹も満たされたことじゃ、そろそろ仕事を始めようではないか。

 今月は、注文が七十件も入っておる。

 日曜日も休みなしじゃ。

 嬉しい悲鳴とは、まさにこのことじゃ。

 汗水垂らして働く。それが日本人の心意気じゃ。

 おっと、危ういところであった。

 鼻水を垂らしてはならん。

 日本人形を汚してしまうところであった。

 そなた、だいぶ髪が伸びたのではないか。

 命が吹き込まれた証じゃな。

 可愛ゆいぞ。可愛ゆいぞ。

 美人であるぞ。美人であるぞ。

 他家に嫁がせるのは惜しいのう。

 我が家で奉公するか。

 そうか、そうか。

 我が家で奉公したいであるか。

 嬉しいことを言ってくれるのう。

 よしよしよし。本に可愛いお子じゃ。
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