江戸女と未来からの訪問者
「まあ、立ち話もなんじゃから、部屋に上がりなされ」

「はい。お邪魔させていただきます」

 嬉しいのう。嬉しいのう。本に本に、嬉しいのう。

 こんな美男子を家に上げるのは、初めてのことじゃ。

 と申すより、男子を家に上げること自体が初めてのことじゃ。

 どうもてなそうかのう。

 んん、何をそんなに驚いた顔をしておる。

 日本人形を見たことがないのか。

「これは、何ですか?」

「囲炉裏じゃ。知らんのか」

「知りません。初めて見ました」

「二千百五十八年の日本に、囲炉裏はないのであるか?」

「ありません」

「そうであるか。残念な話じゃのう」

「はい。僕も残念だと思います」

「まあよい、そこに座りなされ」

「はい」

 正座せんでよい。

 あぐらをかけ、あぐらを。

 男子たるもの堂々とせい。
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