衝撃的発言から始まる、シンデレラストーリー
ワンルーム8畳の小さな部屋。

19インチのテレビからはバラエティ番組特有の笑い声が流れ、テレビが一番見やすい位置には万年床。

そしてその前にある小さなテーブルには、晩酌中の安ウイスキーと割るための炭酸と、袋を開けたままのミックスナッツと小分けのチョコレート。

布団の周りには、手を伸ばせばすぐ届くように小物が乱雑に置かれている。


その惨状を見て、副社長は言葉を無くした。


「……だから副社長が入るような場所じゃないって」


全く失礼な男である。

人が築き上げた自分だけの楽園に、勝手に踏み込んで驚いているんだから。


まあでも。

私がこんな人間だって知って幻滅してくれたなら、これ幸いといったところか。


「副社長が座る場所はありませんよ。だからさっさとお帰り下さ――」

「ここ、座るぞ」


私の言葉を遮ってそう言うと、副社長は私が先程まで半分横になりながら座っていた布団の上に座る。


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