衝撃的発言から始まる、シンデレラストーリー
店内は、気持ちを落ち着かせるような淡い明るさと、心地よいオールドジャズが気にならない程度に流れている。
仄かに、熟成されたピートの香りが、つん、と鼻を通り抜ける。
カウンターのみで構成された極上の空間は、私の荒んだ心の中を浄化してくれるようだ。
私から見て、一番右端の席。
そこがいつもの指定席だ。
たまに先客がいて座れない事もあるが、今日は運よく空いている。
いつものようにそこに腰を掛けると、マスターに声を掛けた。
「マスター、いつものを」
「かしこまりました」
テネシー・クーラー。
このお店に来ると必ず最初に頼む、ウィスキーベースのカクテル。
どのお酒も美味しいが、私はこのお酒が一番好きで定番になっていた。
なぜならミントグリーンの清涼感が、このもやもやとした気持ちを一掃してくれるから。