衝撃的発言から始まる、シンデレラストーリー
お酒が出来上がる間、瞳だけを動かして他に座る客を見る。
私の座る席からひとつ飛ばして、三番目にスーツ姿の男と女。
目線だけ動かしているので、顔は見えない。
だが、微かに会話だけは聞こえてくる。
どうやら恋仲のようなのか、そういった類の話をしているようだ。
ムードのある店内に強めのお酒。
女性を落とすには格好の場所だ。
……けっ。
いいよね、こんな洒落た店に異性とふたりだなんて。
こちとら聞きたくもない愚痴聞かされ、疲弊しているというのに。
なんて醜い嫉妬も、「お待たせしました」と目の前に出されたテネシー・クーラーをひとくち含んでしまえば、スッとどこかに消え去ってしまう。
……ああ、美味しい。
喉元が熱くなる感覚もたまらない。
しばしグラスに手を掛け、その余韻に浸っていた。