衝撃的発言から始まる、シンデレラストーリー

「う、うわ……」


「君は……」


目の前の男も、私の顔を見るなり目を丸くして驚いているようだった。

そんな混乱の中、男の隣に座っていた女が足早に席を立ち、店を出ていく。


私は慌てて、目の前の男に声を掛けた。



「ちょ、後藤副社長!お連れの女性の方、帰っちゃいましたよっ!追い掛けて下さいっ!!」




しかし、後藤副社長は動かない。

しまった、といったような表情でこちらを見ている。


「……まさか、成瀬に見られているとは……」

「いや、……だから、女性!いなくなってしまいましたから!」


そう必死に言うものの、副社長はやっぱり動かない。


ただ呆然と立ち尽くすのみである。




その間に、カウンターテーブルに広がった液体が、ポタポタと地面に向かって滴り始めた。

それに気付き我に返ると、マスターから紙のナプキンを貰って、急いで拭き始める。


こんな所で副社長と会うとは。

しかも会社ではいつも冷徹かつ冷静沈着な副社長が、"変態"だなんて。


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