衝撃的発言から始まる、シンデレラストーリー

一通り零れた場所を拭き終えて、ようやく落ち着きを取り戻す。

その頃には私の頭の中も、少し冷静になっていた。


「同じものを作り直しましょうか?ほとんど飲んでいませんでしたでしょう、お代はいりませんから」

「え?い、いいんですか?……お願いします」


マスターが気を遣ってそう言ってくれたので、その言葉に甘える事にした。

ふう、と息を吐き、席に座る。


するとなぜか副社長が私の隣に座った。


「申し訳ない、私のせいだな」

ホワイトムスクの爽やかな香りが、ふわりと香る。


格好のいい素敵な人、だとは思っていたけれど、それ以上意識した事はなかった。

っていうか、あまりにも雲の上の人過ぎて、そんな風に思えなかったのが事実。

こんなに近くにいた事もなかったし、話す事ももちろんない。



だからだろうか。



隣に座られ、そして声を掛けられて、妙にドキドキと心臓が脈を打つ。


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