星降る空で抱きしめて【上】~女子校英語教師と生徒の恋の場合
やがて村田の足音が聞こえなくなる。

辺りは先生と私の呼吸と遠くに車の走る幽かな音が聞こえるだけ。

その静けさの中、先生が口を開く。



「ごめん、南条。」

「先生…」

「もう…離さないから。」

「!!

先生…!」



先生が私の両手を取る。

先生の掌から温もりが染み込んでくる。

私の胸のうちにあったいくつかの苦しい塊が溶かされていく。



先生から熱い光を帯びた瞳がこちらに向けられる。

私もその視線に真っ直ぐ自分のそれをぶつける。



誰もいない静かな廊下。

この地球上からぽっかり切り取られてしまったようなふたりきりの空間で、見つめ合う。



そして…





「これから忙しくなるぞ!

分からないところは何でも聞けよ。

ビシビシ行くからな!!」



そう言って先生は頬を緩め、いたずらっぽく笑った。



「えっ!!

はっ…はいっ!!」





こうして私はようやく進路を決めて、そしてまた先生に導いてもらうことになった。



先生に付いていきたい。

先生は夜闇にたったひとつ灯る一筋の光─



窓の外はいつの間にか暮れ、秋の風が枝葉を揺するばかりだった。

     *  *  *
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