星降る空で抱きしめて【上】~女子校英語教師と生徒の恋の場合
時計が間もなく5時を指そうという時、
ガチャッと音がして英語教室との境のドアが開いた。



顔を出したのは宇都宮だった。

「初原先生。あと戸締まりお願いしてもいいですか?」

「あ、はい。」

「じゃ、お疲れさまです。…南条、早く帰れよ。」

「はーい。」



それだけ言って宇都宮が出ていく。





『戸締まりお願いしても』?



ってことは…



宇都宮も岩瀬ももう来ない?



(って…先生と…ふたりきり…)



途端にますますドキドキしてしまう。



今、先生の整った横顔を見つめていられるのは…



私だけ─



ふと自分の眼が潤んでしまうのに気付く。

先生の姿がキラキラと揺れて、慌てて指の背で目元を拭う。



この瞬間をひと欠片も残らず感じたくて、瞬きする間も惜しむように私はただただ先生を眺めていた。

ずっと…
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