星降る空で抱きしめて【上】~女子校英語教師と生徒の恋の場合
私は先生の思いに引き込まれるように、ただ黙って先生の話を聞いていた。

先生が続ける。



「ホントは教師になんてならずに大学院に行って研究室に残るつもりだったんだ。」

「研究室?」

「うん。やってた研究が凄ぇ面白かったのね。
教授も好い人だったし。」

「どんなことやってたの?」

「言語の変遷とか…

ほら日本語にもあるでしょ?今と昔で意味が違う言葉とか。」

「枕草子の「をかし」が今の可笑しいと違う、みたいな?」

「うん、まあ、そんな感じかな?

あとは言葉の語源とか、そんな感じのこと。」

「あ、私ね、子供の頃気になってたことあるの!」

「何?」

先生が身を乗り出してくる。



「「道路」と「road 」が関係あるんじゃないかって。」

「ほぉ。」

笑って流してくれればいいのに、先生は急に大真面目な表情で宙を仰ぎ何か考えて、それから私に、

「面白いね。
「道路」と「road 」の直接的な関係は分からないけど、ラテン語と東洋の言語については…」

とか言い出すので、

「ふふっ!」

と私は吹き出してしまった。
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