星降る空で抱きしめて【上】~女子校英語教師と生徒の恋の場合
「……」
彼女が黙りこむと同時に始業のチャイムが鳴った。
「でも…」
取り巻きの一人が食い下がる。
「そういう先生の性格を分かった上で先輩が上手いこと先生に取り入ったってこともあり得ますよね?」
「もしそう思うならあなたもやってみたらいいわ。
先生はどの生徒にも分け隔てなく接して下さいますから、あなたの思うようになるんじゃない?
授業が始まるので失礼したいんだけど?」
中学生たちは一様に項垂れる。
「おい、教室に入れ!」
中学の先生たちが廊下の角から姿を現す。
「舞奈…行こう。」
彼女たちが引き上げていく背中を見ながら、私は揺花に手を引かれて理科室に入っていく。
『先生はどの生徒にも分け隔てなく接して下さいます』─
先生は私のこと…
生徒として、仕事として接していた…
だからきっとあの子達にも…
夢の素晴らしさを説き、泣き崩れてしまえばあの広い胸で抱き締めるんだ。
(そんなの…
嫌…)
黒い感情が胸に渦巻く。
誰にぶつけたいのかも分からない胸が灼けるような感情。
今の私を先生に、あの日逢った夢を語る眩し過ぎるまでの先生に、どうか見られませんように、とただ祈った。
* * *