星降る空で抱きしめて【上】~女子校英語教師と生徒の恋の場合
「……
村田先生には…分からないです。」
「じゃあ誰になら分かるんだ?ん?」
村田の眼が蛇のように私を捉え、口元だけで笑う。
「幸せは努力もなく誰かが運んできてくれるわけじゃないぞ。」
「そんなこと思ってません。」
「親の勧めは拒否するのに、幸せを運んでくれそうな者には追従する、と。
将来の夢は白雪姫か何かか?」
「…っ!」
悔しさに前歯を食い縛る。
私のことだけでなく先生のことまで…
その時不意に村田が私の腕を取り、ぐいと引き寄せた。
「!!」
「ちょっと来い。」
村田は私の耳元でそう言い、椅子から立ち上がる。
そして私の腕を掴んだまま職員室のドアへと向かう。
「せんせ…!?」
「やっぱりお前にはちょっと話をしておこう。」
既に生徒たちの姿がなくなった薄暗い廊下をずんずん進んでいく。
階段を一階上がり、一番近くの選択教室の前で立ち止まる。
そのドアに手を掛けながら村田は言う。
「お前の人生だとは言ったが、そのお前の選択が親御さんや、俺も含め学校に少なからず影響することを肝に命じとけ。
入れ。」
村田ががらがらと引き戸を開ける。