キミノテノヒラノウエ。
7階。角部屋。

玄関を入るとリビングの真正面に海が見えた。

「綺麗。ベランダ広いね。」思わず、窓の前に立つ。

薫ちゃんは部屋に入ると、コンタクトをとって、メガネをかけた。
メガネの下の部分にだけ薄い銀色のフレームがあるスタイリッシュなものだけど、
メガネの薫ちゃんは知っている顔になって少しだけホッとする。


「2LDK。風呂、トイレは別。キッチンはアイランド型。」
と言いながら、私を案内してくれる。

部屋は明るく、ダークブラウンの革張りの3人がけのソファーの前に大きなテレビ。
アイランドキッチンのリビング側に4人がけのダイニングテーブル。
キッチン充実してるね。
薫ちゃんってお料理男子だったのか。
大きな本棚には難しい本がたくさん並んでいる。
シックだけど、
引っ越して来たばっかりって感じかな。

「すごく贅沢。さすがお医者さん。」

「ここって2駅先は、チビスケが降りる鎌倉高校前だよ。」と私の瞳を覗く。

「?」

「チビスケ、ここで俺とルームシェアしない?」と薫ちゃんは笑って言って、
私を4人がけのダイニングテーブルの前に座らせた。


「…」びっくりして声が出ない。

「俺は家事はあんまりできないけど、1人暮らしを始めたい。
静かに生活して仕事と向き合って早く一人前になりたい。
病院の隣はすぐに呼び出されるし、部屋は狭いし、付き合いも大変だ。
俺はチビスケが部屋にいても、気を使わなくていいから楽チンだ。
チビスケはここから裏道通ってチャリで通えば
15分でケーキ屋に着くよ。
家事はチビスケは得意でしょ。
両親が共稼ぎで、おねーちゃんは勉強に忙しかった。
きっとチビスケが担当だったはずだ。
家事をする代わりに部屋代は3万にしとく。
2人で食べる食費も俺が出す。
どう?
いい話でしょ。」

と薫ちゃんはにっこり微笑む。





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