キミノテノヒラノウエ。
「とりあえず、パンケーキ行くか。」と薫ちゃんは笑って立ち上がり、私の手を引いた。

私はおとなしく手を引かれる。

「難しく考えないで、とりあえずやってみれば?
誰も困らないでしょ。
キッチンには業務用のオーブン入れて必要な道具も揃える。
好きなだけ、ケーキを作れば良い。
俺もいつでもケーキを食べられてお得。
細かいルールは暮らしながら決めればいいし、
どうしても嫌だったらやめればいい。」と私の瞳を覗く。

頭の良い薫ちゃんには何を言っても言い返されそうな気がする。

なんだか

丸め込まれそうだ。



地下の駐車場には、薫ちゃんの高級な黒い車の隣に真っ赤な可愛い自転車。

「就職祝い。チビスケの新車。高校の時、チャリ通だったろ。」
と私のイニシャル、Tの飾り文字のキーホルダーのついた自転車の鍵をつまんで私の目の前に出す。

…降参だ。


「…ありがとう。」と掌を出す。

「交渉成立。」

と薫ちゃんは満面の笑みで私の掌に鍵を乗せた。






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