キミノテノヒラノウエ。
今までおねーちゃんから、聞いていた彼氏の話は
薫ちゃんのことじゃ、なかった。
一緒に遊園地に行ったのも、
温泉旅行に行ったのも

薫ちゃんとじゃあ、なかったんだ。

なんだか力が抜けて、ぼんやりする。


ガックリ肩を落とした私の手を引いて
薫ちゃんは帰る途中のビルの中で、アクセサリーの店に寄り、
私の右手を掴んでおねーさんを呼んで
右手に薬指に細い金色の指輪を選び、自分も同じものを買った。

抵抗する気も起きない。

「誕生日プレゼント。
お守りがわり。
必要な時のために肌身離さず、
ずっと付けとけ。」

とこれもまたお揃いのホワイトゴールドの長めのネックレスに指輪を通して私と自分の首に付けた。

薫ちゃんも私も指輪ができる職業じゃない。
医者や看護師はこうやって身につけておくんだ。とにこりと笑って、

「これで安心だ。」と言った。

何が安心?
何がこうやって身につけておくんだって?


どうして?

恋人の妹じゃない私となんでルームシェア?


勝手に勘違いをしていただけなのかもしれない。

恋人の妹。って

薫ちゃんにとっても特別なんだって。
だから、特別な相談や、我儘や、ルームシェアも許されるって
そう思いこんでいた。


どうして?が
胸の中で嵐のように吹き荒れてる。

私は家に帰ると、

「お風呂に入る。」と頭からシャワーをざあざあ浴び、

薫ちゃんの顔を見ずに、自分の部屋で眠ってしまった。

でも…

「ずっと付けとけ。」と
薫ちゃんがくれた、指輪付きのネックレスは
どうしても外すことができなかった。

どうしてかな?
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