キミノテノヒラノウエ。
野村先生が缶コーヒーを買って、桜井先生を連れて、部屋に戻ってきた。

「どうぞ。」とクリームブリュレを勧めると、

「メッチャ、美味しい!」「美味いね。」「カラメルの苦さがオトナ味。」

と口々に褒めてくれる。


「てまりちゃんが来たら教えて。って野村先生に頼んでおいたんだ。
きっと美味しいものがあるかもっておもって。」

「桜井は何しに来てるんだ?」と薫ちゃんは眉間にしわを寄せる。

「てまりちゃんのお菓子を食べに?」

「見舞いじゃないんだ。」と松田先生も笑う。


薫ちゃんの仕事場の人達は薫ちゃんの無愛想な所も、

面倒見の良い所もきっと知っているんだな

とても仲が良さそうだ。


「明日は仕事先のパティシエのコンクールで優勝した物を持って来ますね。」と言うと、

「そんなに気を使わなくっていいよ。
あ。俺、明日休みだから、仕事先に迎えに行こうか?」と野村先生が私に聞いたけど、


「その人は手が早い。てまり、タクシー使え。」と薫ちゃんは機嫌の悪い声を出す。

「ひでえ。でも、辞めとくかな。宮下が無理に退院して来そうだし。」と野村先生がくすんと笑う。

「宮下。おまえ、てまりちゃんのことになると見境ないな。」と松田先生も笑う。


「…タクシーにしておきます。」と私が言うと、

「そうしておいてくれ。」と薫ちゃんは私の顔を見つめている。


…薫ちゃん、あいかわらず、過保護なんじゃない?

と思いながら、缶コーヒーを飲み干した。





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