キミノテノヒラノウエ。
薫ちゃんのベッドのシーツなどを洗ったり、干したりしながら、

私はアップルパイを焼くことにした。
手早く生地を何度も重ねて休ませ、
リンゴを煮ると甘酸っぱい香りが部屋いっぱいに広がる。

私は幸福な気持でアップルパイを焼き、

大ぶりにカットして、お昼ご飯の代わりに食べた。

シナモンの香りもちょうどよかった。と自分を褒め、

薫ちゃんの夕飯は冷蔵庫にあったもので考えることにした。


まだ薫ちゃんの記憶がある身体は怠くボンヤリしてしまう。

少しソファーでお昼寝してから、生姜焼きとサラダを作ろう。

そう思ってゆっくり過ごした。

冬が近い青い海は白波を立てているけど、

私の心は穏やかに満ち足りて凪いでいる。


薫ちゃんは夕飯には少し遅い時間に帰ってきたけど、

私を玄関で深く抱きしめ、長いくちづけをしてから、

「ただいま。」と微笑んでそっと頬を撫でる。

「ご飯、今日は一緒に食べようと思って…」

「嬉しいけど、明日からは先に食べて、先に休めるようにするんだよ。」

と私の瞳を嬉しそうに覗き、

「身体は辛くない?」とそっと抱きしめた。

「大丈夫。」と私が笑って見上げると、

「てまり。愛してる。」ともう一度深くくちづけて、手を繋いで、リビングに入った。

「アップルパイを焼いたの。」と私が言うと、

「楽しみだ。食後にコーヒーと一緒に食べよう」と薫ちゃんは私に柔らかく微笑みかけてくれる。


薫ちゃんの笑顔が好きだ。

私は薫ちゃんにとびきりの笑顔を返した。










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