from・・・
「リター。」
大きな声がして我に返ると、
改札口の前にマリエが立っていた。
「あっ、マリエもギリギリなんだ!
まだ間に合うよ!」
ここまで、全力で走ってきたので、
声にならない声で話かけ、
強引にマリエの腕を引っ張り、
ホームまで駆け上った。
「いたいよーリタ。
何そんなに急いでるの?
別におくれったていいじゃん。」
「あっ、ゴメン。
最近、ちょっと遅刻したくないんだよね。」
「えー、なになに?
小学校の頃はあんなに遅刻してたのに。
クラスで好きな人できた?
あっ、ひょっとしてこの電車に
好きな人がのってるとか!」
ただでさえ良く通る声なのに、
少し興奮したマリエの声は、
いっそう大きく、皆が振り向く。
「ちょっと、恥ずかしいじゃない。ちがうよ。」
「なに照れてるのよ?顔赤くしちゃって、
もう、ホントかわいいっていうか、
純情ていうか。
世間知らずのお嬢様みたい。」
身振り手振りも大きくなり、
ますます調子に乗ってきたようだ。
「違うよ。この前も話たでしょ。
私、受験しようと思ってるの。
先生の印象をよくして
推薦とかもらえたらラッキーじゃない。」
私が諭すようにいうと、
マリエは少しつまらない顔ををして
「そうだったね。お受験ね。頑張ってちょうだい」
と言って満員電車に乗り込んだ。