嘘つきな婚約者
俺は、再び佐山恵都と、出逢う機会を得た。
高校時代、好きで仕方なかった恵都。
やっと付き合うことができたのに、自ら別れる原因を作ってしまい、どれだけ後悔したかしれない。
もう会うこともないかと諦めて、頭の片隅に想いを封印していたのに。
これは、神様が、俺にもう一度チャンスを与えてくれたのだろうか。
どんな素敵な女性と出逢っても、本気にはなれなかった。
いつも恵都の悲しげな顔が頭から離れなかったから。
今回の画廊の建設は、佐山設計事務所からの依頼だった。
計画書を見ていて、恵都の名前に釘付けになった。
高校時代は、恵都が佐山拓人の娘だとは、知らなかった。
俺が、恵都を裏切らずに、順調に付き合っていれば、いずれ知り得たことだ。