嘘つきな婚約者
俺は、恵都とどのような再会にすればよいのか、悩んだ。
大学を卒業して4年間、ボストンの建設会社で勉強がてら仕事をしてきて、この4月に父親の会社に入った。
高校時代までは、父親の愛人の息子として私生児扱いだった。
だから、田所良と母親の姓を名乗っていた。
私生児だと言う負い目から、割りといい加減に生きていたと、今さらながら反省している。
大学進学の時、正式に木崎姓を名乗ることになり、木崎良となった。
だから、恵都は、俺が、田所良とは思わないかもしれない。
外見は、高校時代はバスケット部だから、短い髪型にほっそりとした体型だったが、今は、長い髪型に眼鏡をかけの、ジム通いの成果か割りとがっちりした筋肉質だ。
会った時、恵都が田所良だと気付かなければ、しばらくは、別人だと思われていた方が、仕事が上手く運ぶだろうと考えていた。
何しろ、最悪の別れだったから、恵都は、俺とは仕事をしたくないだろうと思う。
そう決めて、恵都に会うと、案の定、俺の正体に気付いていない様子だ。
しかし、それはそれでおもしろくない。
高校時代の俺の存在が、恵都の中で薄いと言うことなのだから。
実に悔しい。
俺だけが、高校時代の二人に固執していたのかと思うと。