嘘つきな婚約者
演奏会当日、私は、教えられたライブハウスに来ていた。
ワンドリンクは、チケットに含まれているので、私は、オレンジジュースをもらった。
中は、思ったよりも広く、仕事柄キョロキョロと回りの装飾に目がいってしまう。
良さんのバンドは、フォー・ツリーと言う。
4人グループで、4人とも名前に「木」があるので、名付けたそうだ。
今夜は、2番目に演奏した。
最近再結成したため、曲は、以前に作ったものだが、昔のファンにとっては懐かしいらしく、3曲ともに大いに盛り上がっていた。
良さんは、丸いサングラスにつばのある帽子をかぶり、両手足を自由自在につかって、リズムを刻んでいた。
真面目で、仕事人間の良さんとは、思えないくらい魅力的な人に見えた。
ファンからも結構「良!」と言う歓声が上がっていた。
良さんたちが終わった後、私はどうしたらいいのかわからずに、入り口の方に向かって歩きはじめると、後ろから腕を掴まれた。
「恵都さん。」
と、良さんが引き留めようとしてくれていた。