嘘つきな婚約者
その画廊は、ビルとビルの間に建築される。
外観は、クリーム色をベースにし、所々に暖かい色のレンガを組み込ませたデザインだ。
勿論、父の設計だが、今回は建築を依頼した木崎(きざき)建設の若い建築士のアイディアも含まれている。
その何とも言えない柔らかな温かみ醸し出す、雰囲気に惹かれずにはいられなかった。
父から、いろいろ聞かされていたが、私もその人に会ってみたかった。
その人は、ずっとアメリカで仕事をしていたそうで、日本を離れてみて、日本の良さに惚れ直して、帰国したとのこと。
私は、まだ見ぬその人に、恋でもしたかのようなむず痒い想いを抱いていた。