嘘つきな婚約者
俺は恵都の申し出に、素直に従うことにした。
恵都の母親は、男の子が欲しかったと、俺の世話をしたがった。
恵都の父親も、同業者と言うこともあり、話が合う。
思ったよりも気を使うことなく、仕事にも集中できて、有り難かった。
しばらく振りで、美容室の現場に顔を出すと、丁度、宗像さんが来ていた。
「木崎さん、その後、肩の方はどうだね。由佳理も責任を感じている。何度か、君のマンションを訪ねたそうだが、いつも留守だそうだ。」
「ありがとうございます。痛みもなく、順調にくっつき始めていると思います。実は今、不自由だからと、佐山さんの家でお世話になってまして。」
「そうだったのか。由佳理も何かお手伝いができればと言っていたから、もし、手が必要なら、言ってやってくれないか。」
「いや、大丈夫だとお伝えください。」
「わかった、つたえるよ。お大事に。」
「それでは失礼します。」
俺は現場の様子を見て回った。