嘘つきな婚約者
美容室に着いた。
私は、父が来るのを待つことにした。
再度、良さんの携帯にかけたが、つながらない。
この中に良さんがいるのだろうか?
心配な気持ちを抑えられなくて、ドアに手をかけ、ゆっくりと開けた。
今日は、工事は休みなのだろうか、物音一つせず、静まりかえっている。
私は、恐る恐る、なかに入り、
「良さん。」
と声をかけた。
しかし、何の反応もない。
良さんは、声も出ないくらいの状態なのだろうか。
数歩進んで行くと、奥から、誰かが出てきた。
「あなたがいるから、良さんは私を見てくれないのよ。私たちの前から、消えてくれないかな。」
低く冷たい声の由佳理さんだった。
「何を言っているの?」
私は、知らず知らずのうちに声が震えていた。