嘘つきな婚約者
父は、
「私は、警察の介入は、望んでいません。だが、今後のこともあるから、弁護士をたてて、文書に残してはと、考えています。」
「佐山さん、ありがとうございます。不詳の娘ですがまだ将来があります。そうしてくださるのなら、こちらは何も望みません。」
「良くん、どうだろうか?」
「刺されそうになったのは、恵都なので、恵都さえよければ。」
「私も大袈裟にしたくないから、由佳理さんが、今後、私たちに関わらないと約束してくれるなら、それでいいと思います。」
由佳理さんは、項垂れたまま、何も言わない。
精神的に、病んでいるのだろうと、想像できる。
それだけ、良さんのことを想っていたのだろうけど、人間の常識を逸脱してしまったのは、許せるものではない。
その後、父の会社の顧問弁護士によって、私たちに近づいたり、関わったりしないと言う約定書が作成された。
由佳理さんは、宗像さんの実家のある九州に母親と静養に行くことになったそうだ。