嘘つきな婚約者


父は、一緒に行くと言ってくれた。

3人で、近くの和食のお店に入る。

丁度個室が空いていたので、黒田武瑠であることが他の人にわからなくてよかった。

父が食べながら、

「黒田さん、仕事の打ち合わせは事務所でお願いしたい。あなたは、有名人だからいろいろ詮索される。それに恵都を巻き込まれては困ります。」

「でも、恵都さんに僕について理解してもらわないと、僕の希望する部屋は作れな……」

話の途中で父が遮るように

「待ってください。あなたの要望を聞いただけで、恵都はあなたの希望する部屋がデザインできます。」

父にしては珍しい。いつも穏やかな人なのに。

「申し訳ないが、それでご不満なら、この依頼はお断りしたいが。」

父の強い口調に私もびっくりした。

黒田武瑠は、仕方ないと言わんばかりに、

「わかりました、わかりました。打ち合わせは、事務所で構いません。」

「それと、余計な事かもしれませんが、恵都は、3月に結婚が決まっていますので、くれぐれもスキャンダルにならないように、お願いいたします。」

父は、最終警告のように言い放った。
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