嘘つきな婚約者
良さんは、
「恵都がお世話になっているそうで。」
と頭を下げた。
「へぇー、それはそれは」
と黒田武瑠は、良さんをなめまわすように見る。
そして、
「じゃ、俺は退散するよ、またね。」
片手を挙げて、やっと行ってくれた。
「黒田武瑠と知り合いなの?」
と女性陣からの質問は当然か。
私は、仕事の依頼があり、内装を担当していると話した。
今さらながら、あらかじめ良さんに話しておいて正解だ。
黒田武瑠の登場で、良さんの女性関係は、うやむやになってしまった。
そして、良さんの機嫌が悪くなった。タクシーのなかでも、全然話さない。
家について、
「おやすみ」
と部屋に入ってしまった。
毎晩、おやすみのキスをしてくれていたのに。