嘘つきな婚約者
式場の後、良さんのマンションの掃除にきている。
式場の担当の橋場さんの前では、いつもの通りの良さんだった。
マンションまでは、ほとんど話さない。
マンションの玄関を開けリビングに入るなり、良さんは私を抱きしめてきた。
その強さに、腕は大丈夫かと心配になる。
「苦しいよ。」
と言うと、
「ごめん。」
と少し弱めてくれたが、私を離そうとしない。
以前、高校時代の事を話してくれた時と重なる。
「恵都、何があっても離さないからな。やっと手に入れたのに、離すもんか。」
と私に宣言した。
しばらくして、落ち着いた良さんは、私の肩を抱いて、ソファーに座った。
そして、静かに
「情けないよ。自分の中にこんな醜い感情があるなんて。」