嘘つきな婚約者


やっと部屋が決まった。

昨年、木崎建設が建てたマンションに、まだ空きがあった。

三階だから、景観はあまりよくないが、駅前だから、とても便利である。

ベランダが広く、突き出た屋根があり、まるで部屋と勘違いしそうだ。

これがかなり気に入り、二人で決めたのだ。

子どもができても、十分遊ばせられるスペースである。

良さんは、1月末さっそく引っ越しをし、私も少しずつ、荷物を運ぶことにした。

家具や使う物を二人で選ぶのも、デートしながらの楽しみになった。

私は、2月末に引っ越しをする。

そして、結婚式の2日前に、家に一旦帰ることにした。

独身最後の日は、両親と過ごしたかった。

良さんは、腕が治ったら私を抱くようなことを言っていたが、その素振りさえなかった。

まあ、もうすぐ結婚式だから、焦っていないのかなあと、自分の都合よく考えていた。
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