嘘つきな婚約者
良さんは、堅物までとはいかないが、女性と上手く適当に付き合える性格ではなさそうだ。
だから、父親である木崎社長が心配して、私に白羽の矢を当てたにちがいない。
「ほら、お前からも、恵都さんに頼みなさい。
」
と木崎社長は、良さんを促している。
彼自身も、突然の父親の申し出にどう言えばいいか、試案気味だ。
「では、お友だちとして……」
とやっと口を開くことができたようだ。
私の方も父が、
「恵都はどうなんだ。」
「私も、お友だちなら……」
と答えた。
父親同士は、それでも満足した様子だった。
それから、良さんと私は、仕事を通しながらも、たまに食事にいく関係になっていった。